戸建て住宅の屋根には、瓦屋根・スレート屋根・金属屋根などがありますが、地震による被害を受けやすいのは瓦葺き屋根です。瓦葺き屋根には、粘土系やセメント系がありますが、共通するメリットとデメリットがあります。
メリットは、耐久性や意匠性に優れ、割れたりひびが入ったりしても、部分的な交換が可能ということでしょう。粘土系の瓦なら、断熱性も高いというメリットもあります。
しかし屋根瓦は、重量があり、地震や台風で落下する危険性があるなど、耐震性で劣るというデメリットがあります。
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地震による屋根被害のほとんどは瓦葺き屋根

屋根瓦は、ずれたり割れたりするなど、地震による被害を受けやすい屋根材です。地震発生直後の屋根修理に関する依頼は、瓦葺き屋根に集中します。瓦葺き屋根は、瓦ずれや瓦割れなどの不具合が起こると、雨漏りの原因になりますので、早めの修理が必要です。
さらに、不具合のある屋根瓦は、落下して通行人を直撃するような事故を起こす危険性があります。そのため、屋根瓦が崩れ落ちる前に、施工業者などに依頼して、不具合のある瓦を屋根から下ろし、補修する必要があります。業者による撤去作業などが終わるまでは、張り紙などで注意喚起を行ってください。
瓦葺き屋根において特に地震により崩れやすいのは棟瓦

瓦葺き屋根において、地震により崩れやすい箇所は棟瓦です。軽微のずれであれば、漆喰補修や積み直しだけで修繕できますが、ずれが大きいと葺き替えのような大掛かりな工事になります。棟瓦は、台風の時にもずれることがある箇所です。地震や台風のあとは、棟瓦のずれや歪みがないか確認してください。目視できない時は、施工業者に点検依頼をするとよいでしょう。
ちなみに棟とは、傾斜のある勾配屋根において、屋根面が交差している部分のことです。それぞれの部分に呼び名があり、屋根の一番高い水平な部分を大棟(おおむね)といいます。そして、切妻造や入母屋造で大棟などから軒先に向かっている部分が下り棟(くだりむね)です。寄棟造で屋根の隅に向かっている部分は、隅棟(すみむね)もしくは隅下り棟などといいます。また、屋根の流れに沿って下っている部分をまとめて下り棟と呼ぶこともあります。
瓦葺き屋根は工法を変えることで地震被害を軽減できる

地震による被害は瓦葺き屋根に集中しますが、崩れやすさの度合いは瓦葺き工法の違いが影響します。瓦葺き屋根で被害が発生しやすいのは棟瓦の部分です。もし、棟瓦の施工が大回し工法などの旧工法で行われている場合は、耐震性の高いガイドライン工法への改修をお勧めします。
旧工法には、大回し工法のほかにも、緊結線の使い方が違う千鳥緊結(ちどりきんけつ)や碇緊結(いかりきんけつ)などがあります。いずれも旧工法は、棟瓦と建物が直接連結していないため、重みで強風に耐えることができても、地震で崩れる危険性のある工法です。
棟瓦の施工では、熨斗瓦(のしがわら)という短冊状の瓦を、葺き土や漆喰で固定しながら積み上げ、その上に丸形や山形の冠瓦(かんむりがわら)を載せる工法が多く見られます。
大回し工法は、銅線などの緊結線を使って、積み重ねた熨斗瓦と冠瓦を括り付ける工法です。銅線を大きく回して積み重ねた瓦を括るため、大回し工法と呼ばれています。大回し工法は、耐風性はありますが耐震性が低くい工法です。
近年は、耐震への関心が高まり、ガイドライン工法が広まっています。ガイドライン工法では、棟心材や棟補強金物を使い、冠瓦をしっかりと固定し、熨斗瓦同士は緊結線で連結します。ガイドライン工法なら、地震が起きても瓦が落下する心配は少ないでしょう。
ガイドライン工法は、熨斗瓦を使わずに、冠瓦のみで施工することも可能です。冠瓦がしっかりと固定されるため、地震や台風などが発生しても崩れる可能性は低いでしょう。
地震による屋根被害に遭ったらまずは応急処置をしてもらう

地震による大規模災害が発生すると、屋根工事業者にも修理依頼が殺到します。すぐに修理に取り掛かれなくても、状況を伝えて応急処置を依頼してください。瓦葺き屋根の場合は、屋根瓦が崩れて落下する危険性があります。出入りの瓦業者への連絡は、早めに行いましょう。屋根瓦が崩れる危険性があるときは、通行人などに対して張り紙などによる注意喚起も必要です。
屋根瓦の崩れる危険性が低くても、瓦のずれや歪み、割れなどがあると、雨漏りの原因になります。ブルーシートを張ったり、補修テープを貼ったりするなど、一時的な応急処置だけでも早めに行ってもらうよう依頼してください。また、屋根に上る作業は危険を伴いますので、無理をして自分で対応することは避けてください。
地震災害に遭った時の修理費用は公的支援や民間支援を活用する
地震災害により家屋が損壊した場合は、公的支援や民間支援を受けることができます。どのような支援があるのか、前もって把握しておきましょう。
地震による住家の被害状況を調査する罹災証明書の申請を忘れずに
地震などの災害に遭った被災者は、市町村から罹災証明書の交付を受け、各種被災者支援措置を活用できます。地震被害での屋根修理は、該当することが多いので早めに申請してください。
支援には、公的支援と民間支援があります。自治体の支援制度は、自治体によりさまざまです。ホームページを閲覧するか、電話や窓口で問い合わせるなど、確認してみてください。
公的被災者支援策
- ・被災者生活再建支援金や義援金の給付
・住宅金融支援機構や災害援護資金からの融資
・税や保険料、公共料金等の減免・猶予
・仮設住宅や応急修理の現物支給
参照元: 内閣府 防災情報のページ(http://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/pdf/risaisyoumeisyo_gaiyou.pdf)
自治体は、罹災証明書の申請があると、調査員を現地に派遣して被害状況を調べ、被害の程度を証明する書面を交付します。被害の程度は、損害割合に応じて認定されます。
認定の基準は次の表を参考にしてください。多くの自治体では次のような基準により認定しています。
被害の程度 | 全壊 | 大規模半壊 | 半壊 | 一部損壊 | 無被害 |
損害割合 | 50%以上 | 40%以上50%未満 | 20%以上40%未満 | 0%以上20%未満 | 0% |
また、自治体の調査員が来るまで日数を要することを考慮して、被害写真を撮って証拠を残してください。合わせて、平面図を使い被害箇所の面積などを記録しておくとよいでしょう。
補修工事をする前に、被害状況の写真を撮って記録しておかないと、罹災証明書の認定に影響するかもしれません。屋根の写真撮影は危険ですので、屋根工事業者に依頼できるか確認してください。なお、自治体の調査員が、被災した屋根に上って調査したり写真を撮ったりすることはありません。
地震保険を屋根修理に適用する
地震保険に加入していれば、地震被害の屋根修理に保険金を当てることができます。地震による被災であれば、外壁のひび割れなどでも保険金が下ります。地震保険は、火災保険に付帯する方式で契約する保険です。
2015年度の内閣府の推計によれば、持ち家世帯において火災補償のある方が約82%であるのに対して、地震補償まで付帯している方は約49%とのこと。
参照元: 内閣府 防災情報のページ
(http://www.bousai.go.jp/kaigirep/hisaisha_kyosai/pdf/houkoku_point.pdf)
地震保険は、火災保険では補償されない、地震を原因とする損害を補償するための保険です。火災保険を使って屋根修理ができるのは、風災による被害です。風災には、台風・強風・雹(ひょう)・大雪などによる自然災害が該当します。
火災保険に地震保険をセットにして契約すると保険料は高くなりますが、地震リスクへの備えとしての必要性は高いでしょう。
地震保険制度は、民間の損害保険会社が負う地震保険責任を政府が再保険をすることで成り立っています。政府が再保険をするおかげで、巨大地震が発生し、巨額な損害補償を必要としても、円滑に保険金が支払われます。
地震保険は地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没または流失による被害を補償する地震災害専用の保険です。
引用元:財務省 地震保険制度の概要
(https://www.mof.go.jp/financial_system/earthquake_insurance/jisin.htm)
まとめ
瓦葺き屋根は、耐久性が優れている上に意匠性も高いため、人気のある屋根材ですが、耐震性という観点では金属屋根やスレート屋根に劣ります。しかし、耐震に関する意識が高まるにつれ、瓦葺き工法自体も進化しています。
棟瓦が崩れるなどの被害が出る家屋は、旧工法により施工した古い建物が多いようです。家屋倒壊に関しても、屋根瓦の重量よりも躯体強度の問題が大きいのです。もちろん、古い建物に住んでいて不安があるなら、瓦屋根から金属屋根に葺き替えることも、選択の一つでしょう。
どのような屋根修理にするかは、損害の程度にもよるでしょうし、信頼できる専門業者へ相談することが大切です。
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※状況によっては全体修理をおすすめする場合もございます。