日本の住宅に用いられている屋根材は、基材に使う素材によって大別すると、窯業系の粘土瓦やセメント系か、金属系のいずれかに分類される製品がほとんどです。自然系であれば、石系の天然スレートや、草木系の茅葺き・檜皮葺き・杮葺きなどがあります。また、北米でのシェア率が高い化学系のアスファルトシングルが、日本でも使われるようになりました。その他にも、瓦の副資材として、採光目的に瓦と同形に加工した、ガラス瓦があることをご存じでしょうか。
ここでは、日本で広く普及している、粘土瓦および、セメント系や金属系の屋根材を中心に解説します。日本では、多種多様な屋根材が使われていますが、一読していただければ、屋根材についての知識が深まるはずです。新築やリフォーム、あるいは屋根修理をする際の参考にしてください。
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粘土瓦

粘土瓦は、岩石が風化してできた粘土を、圧縮成形し乾燥後に、1,000~1,250度程度の高温度で焼成した屋根材です。釉薬を施して製造した陶器瓦に関しては、100年以上持つと言われています。無釉薬の粘土瓦も、60年ほどの耐久性があり、他の屋根材に比較すると、長寿命の屋根材と言えるでしょう。
日本における粘土瓦は、愛知県西三河地方の三州瓦、兵庫県淡路島の淡路瓦、島根県石見地方の石州瓦が有名であり、三大産地として知られています。
日本における粘土瓦の始まり
日本で瓦作りが始まったのは、飛鳥時代のことで、日本最古の瓦は飛鳥寺の瓦とされています。日本書紀によれば、西暦588年に、百済から僧侶や寺工らとともに、瓦博士が渡来し、瓦作りを伝えたとのこと。その後、寺院や城などの屋根材として使用されるようになりました。
粘土瓦は、江戸時代になると、武家屋敷などにも使用されるようになり、防火の観点から徐々に広まりましたが、一般市民の住宅に使用されるようになったのは明治以降です。そして、昭和20年代から粘土瓦の本格的な工業生産が始まり、粘土瓦が普及するようになり、現在に至っています。
本瓦葺きと桟瓦葺き
本瓦葺きとは、平瓦と丸瓦を交互に組み合わせて並べる、古来の工法で、現在でも寺社仏閣などで見ることができます。本瓦葺きでは、棟や軒先には、多様な役物瓦が使われています。
一方、桟瓦葺きは、江戸時代に日本で開発されたもので、平瓦に丸瓦を併合させることで、軽量かつ安価に粘土瓦を製造できるようになりました。桟瓦は、基本的な瓦である平瓦と、部位ごとの特殊な役物瓦で構成されています。そして桟瓦は、伝統的な和瓦として、一般住宅で使用されています。なぜ桟瓦と呼ぶかというと、葺き上がったときに、山になる部分の連なりが、障子の骨である桟のようだからという説が有力です。
瓦が登場してから昭和初期までは、土葺き工法により施工されていました。土葺き工法は、屋根下地に粘度の高い葺き土を敷いて、瓦を押し付ける工法です。よって、桟瓦葺きが発明されたのが江戸時代であることから、桟瓦の由来は、昭和になってから普及した引掛け桟ではなく、障子の桟であるという説が有力でしょう。
現在、広く普及している、引掛け桟瓦葺きは、屋根下地に桟木と呼ばれる木材を打ち付けて、その桟木に瓦の裏のツメを引っ掛けた上で、釘打ちして固定する工法です。引掛け桟瓦は、明治時代に考案されていましたが、製造や運搬が難しかったため、すぐには普及しませんでした。
地震により、屋根から瓦が崩れ落ちる危険性が高かったのは、土葺き工法が主流の頃の話です。阪神・淡路大震災が発生したときの関西圏では、土葺き工法から引掛け桟瓦葺き工法への移行が進んでいませんでした。家屋の倒壊についても、原因は瓦の重量よりも建物構造の強度にあったようです。
また、従来の引掛け桟瓦葺き工法では、棟部の中だけは葺き土で施工していましたが、現在はガイドライン工法が普及し、さらに揺れや強風に強くなりました。ガイドライン工法では、金具や銅線やビスなどを使って、構造躯体と棟部を一体化しています。
現在の瓦葺き工法は、地震や台風に対する安全性が格段に向上していますし、近年の住宅は、躯体強度や耐震性などが高くなっています。粘土瓦は、耐久性などを考えると、魅力的な屋根材と言えるでしょう。
和瓦と洋瓦
日本の瓦は、和瓦と洋瓦に大きく分けられます。明治時代になると、本瓦や桟瓦に加えて、西洋の瓦も伝わり、区別するため洋瓦と呼びます。
明治時代に、フランス人のアルフレッド・ジェラールが横浜に工場を造り、フランス瓦の製造を開始しました。このフランス瓦は、ジェラール瓦とも呼ばれていました。ジェラール瓦は、現在のF形瓦の元祖とも言える洋瓦です。
F形瓦のFは、平面を意味するフラットに由来し、平板状のデザインが特徴の瓦です。F形瓦には鬼瓦などはなく、特殊な役物瓦が少ないため、すっきりとしたモダンな屋根に仕上がります。F形瓦は、近年の日本建築では、多くの洋風住宅で採用されています。
大正時代になると、スペイン瓦(スパニッシュ瓦)が輸入されるようになりました。かつてのスペイン瓦は、日本の本瓦のように、山と谷が別々の瓦でした。そのスペイン瓦を改良し、山と谷を一体にして一枚の瓦にしたのが、S形瓦です。S形瓦のSは、スパニッシュのSです。
そして、F形瓦やS形瓦といった洋瓦に対して、和瓦のことをJ形瓦と呼ぶようになりました。J形瓦のJは、JapaneseのJです。
釉薬瓦と燻し瓦と無釉瓦
粘土瓦は、焼成する際の製法により、釉薬瓦と燻し瓦と無釉瓦に大別されます。
釉薬瓦は、釉薬により様々な色を表現でき、ガラス質の釉薬を塗布して作るため、表面に耐水性のある瓦です。釉薬瓦は、高温焼成のため耐寒性もあり、無釉薬瓦より耐久性が高くなります。釉薬瓦は、陶磁器の焼成区分が陶器に当たるため、別名が陶器瓦です。釉薬を塗布していない裏面などは、素焼きの赤色をしています。
なお、焼成の際に、空気を遮断する還元瓦や、釉薬の代わりに塩を使用する塩焼瓦(しおやきがわら)も釉薬瓦に含まれます。ただし、現在、塩焼瓦はほとんど製造されていません。
燻し瓦は、釉薬を使わずに素地の状態で焼成した後に、液化石油ガスや灯油などで燻し、瓦の表面に炭素膜を形成します。新品の燻し瓦は、裏表が均一な美しい黒色に仕上がり、経年により黒色から銀色へ色調が変化し、いぶし銀の輝きが現れるのも魅力です。低温焼成のため、歪みが少ないのも特徴です。
無釉瓦とは、釉薬を施さず、燻化工程もない瓦のことで、釉薬瓦や燻し瓦と区別しています。無釉瓦には、粘土素地をそのまま焼き上げた素焼瓦のほか、金属酸化物を練り込んだ練り込み瓦、焼き具合を調整して色調を出す窯変瓦(ようへんがわら)などがあります。
練り込み瓦は、二酸化マンガンや酸化第二鉄などの金属酸化物を原料粘土に練り込むことで、発色させる瓦です。
窯変瓦は、酸化炎と還元炎の焼き具合により、色調を変化させた瓦で、仕上がりは、焼きむらに濃淡のある茶色です。窯変瓦は、酸素ガスを調整するなど、窯の中の環境を変えながら、焼き上げています。
セメント系屋根材

セメント系の屋根材は、セメント瓦や化粧スレートなど、数多くの製品が開発され、日本の屋根に使われてきました。セメント系の屋根材は、改良が進み、高級品であれば軽量で丈夫な屋根材があり、耐久性においても高い性能を期待できます。ただし、セメント系の屋根材は、実際に使われる中で、問題が発生し、廃番になった商品も多いようです。
セメントとは
セメントとは、モルタルやコンクリートを作るための、石灰石や石膏などを原料とする粉末状の結合材のことで、水を加えて練ると化学反応により固化します。広義のセメントは、アスファルト、膠、樹脂、石膏、石灰などを含む、結合材や接着剤など全般を指します。ただし、ここで言うセメントは、ポルトランドセメントや混合セメントなど、水硬性セメントのことです。
ポルトランドセメントは、最も代表的なセメントで、一般的にセメントと言えばポルトランドセメントのことを指します。ポルトランドセメントという名称の由来は、イギリスのポートランド島産のポルトランド石に似ているからです。ポルトランドセメントの製造では、石灰石、粘土、珪石、酸化鉄などを乾燥させ、粉砕した後に、焼成、急冷して、まずはクリンカを製造します。次に、このクリンカに石膏を加えて微粉砕したのが、ポルトランドセメントです。
そして混合セメントは、ポルトランドセメントに各種混合材を混ぜ合わせたセメントのことです。混和材には、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ質混合材などが使われます。
セメントに、水だけを加えて練り混ぜたセメントペーストを、ノロといい、タイル張りや目地仕上げの接着剤として使います。
モルタルとコンクリート
モルタルは、セメント1に対して砂(細骨材)を2もしくは3の割合で加えて、混ぜ合わせてから、水で練って作ります。コンクリートは、一般的にセメント1、砂3、砂利(粗骨材)6、あるいはセメント1、砂2、砂利4の割合です。
薄型化粧スレート
化粧スレートは、セメント板などともいい、セメントに珪砂や補強繊維などを混ぜ合わせて、厚さ5、6mm程度の薄板状に加圧成形した人造スレートのことです。化粧スレートは、薄型の平板で、住宅用屋根材として広く普及しました。スレート(slate)とは本来、粘板岩のことで、固くて剥離性に富む粘板岩を、薄い板にして屋根材として用いたのが、天然スレートです。つまり、化粧スレートは、石板の屋根材を模して、セメントで製造した屋根材です。
かつての化粧スレートは、発癌性のある石綿(アスベスト)を、セメントに混ぜて成形加工していたため、石綿スレートとも呼ばれていました。石綿は、社会問題となる90年代ごろまで建材に使われていましたが、現在は石綿が使われることはありません。石綿は、平板の化粧スレートのほかにも、屋根カバー工法の先駆けとなった「セキスイかわらU」などの、波形スレートにも使われていました。「セキスイかわらU」は、1990年7月以前の製品には石綿が使われ、その後、ノンアスベスト化し、2007年9月の廃番まで製造されました。ノンアスベスト化した「セキスイかわらU」は、とても脆く、トラブルが多かったようです。なお、石綿が使われていない製品に関しては、繊維強化セメント板と呼ぶこともあります。
平板の化粧スレートは、カラーベストやコロニアルと呼ばれることもありますが、これはケイミューのブランド名です。ケイミューは、クボタと松下電工(現パナソニック)の住宅外装建材部門が事業統合をして設立した会社です。
化粧スレートは、厚みや素材、デザイン、仕上げなどが様々であるため、価格は製品により大きく異なります。平板のカラーベストやコロニアルなども、波形のセキスイかわらUなども、従来の和瓦や洋瓦と違い、軽量で大判サイズであることが特徴の一つです。
化粧スレートは、セメントを成型加工した後に、塗装により仕上げていますので、経年して変色や脱色が起こります。表面の塗装が劣化した場合は、塗装によるメンテナンスが必要であり、放置すると基材の劣化が早まります。
セメント瓦(厚型スレート)
セメント瓦とは、セメントと骨材などを主原料とする瓦のことで、成形後に塗料により着色するなどした屋根材です。セメント瓦は、粘土瓦のように、焼きねじれや凍害などがありませんが、セメント瓦の多くは、塗装によるメンテナンスが必要です。セメント系の屋根材は、メーカーや商品により異なる製造方法が用いられており、何種類かに大別できます。
セメントと砂を型枠で高圧プレス成型した製品は、プレスセメント瓦と呼ぶれることがあります。また、プレスセメント瓦は、厚型スレートとも呼ばれますが、これは前述の化粧スレートが薄型であるのに対して、用いられる呼び方です。
セメント瓦には、無塗装品もありますが、一般的なプレスセメント瓦は、塗料で着色されています。これらのセメント系の屋根材は、経年により変色や脱色が起こり、セメント瓦自体の劣化が早まるため、メンテナンスのための塗装が必要です。プレスセメント瓦の中には、釉薬で処理した、耐火性能の高い施釉セメント瓦もあります。
それから、コンクリート瓦と呼ばれる製品は、プレスセメント瓦と同じように、原料にセメントや骨材などが使われていますが、配合割合や製法が異なります。一般的に、コンクリート瓦はセメントの配合量が少なく、骨材の配合量が多いはずです。
乾式コンクリート瓦(乾式洋瓦)は、メーカーにより、モニエル瓦・クボタ洋瓦・スカンジア瓦などと呼ばれている屋根材です。ただし、これらの乾式コンクリート瓦は、ほとんどが廃番になりました。乾式コンクリート瓦は、小口(端面)に凹凸があり、小口が平滑なプレスセメント瓦と見分けることができます。
モニエル瓦は、オーストラリアのモニエル社と日本のクボタが、高圧・半乾式成形の技術を共同開発して、日本に技術導入したことで誕生した屋根材です。モニエル瓦は、水分の少ない状態でセメントを用い、真空ドレン機による押し出し成型により加工します。
モニエル瓦は、成形後に、「着色スラリー層」と呼ばれる厚い塗膜を塗り、さらにアクリル樹脂のクリアー塗料を塗っています。「着色スラリー層」は、無機質着色材が1mm以上の塗膜層です。この「着色スラリー層」は、塗り替え時に、下地処理を適切に行わないと、塗り替え後の塗膜が1、2年で剥離するなど、施工トラブルの原因になるため、注意が必要です。また、下塗用のシーラーに関しても、モニエル瓦に適した専用のものを使う必要があります。
他にもセメント瓦には、樹脂繊維混合セメント瓦や高分子繊維強化セメント瓦のように、セメントを基材として繊維素材や樹脂などを加え、強度を上げた製品があります。これらのセメント瓦は、重厚感がありますが、軽量であり、工場生産時に高耐候塗装が施されていることが多いようです。
例えば、ケイミューの「ROOGA(ルーガ)」は、和瓦風と自然石風の2種類がある、厚型のセメント系屋根材です。しかも、重量は陶器瓦の半分程度と軽量。また、ROOGAに施されている無機系塗膜「グラッサコート」は、30年相当の超促進耐候性試験では、色の変化はほとんど目立たないとのこと。そのため、再塗装の必要性はほとんどなく、メンテナンス面でも優れているようです。なお、ROOGAの一般名称は、ケイミューの公式サイトに、樹脂混入繊維補強軽量セメント瓦となっています。
ROOGAは、デザインが「雅」と「鉄平」の2つに分かれ、それぞれにカラーバリエーションがあります。「雅」は桟瓦2枚を一体化したような形状をしており、和風住宅に合う屋根材です。厚みが25mmあり、従来の陶器瓦と変わらないため、重厚感があります。「鉄平」は、鉄平石をモチーフにした自然石調の屋根材で、厚さは30.5mmです。重厚感があり、素材感も再現されています。
次に、「セキスイかわらBrook」という商品について説明します。ただし、このシリーズは、2010年5月に廃番となっています。「セキスイかわらBrook」は、高分子繊維強化セメント瓦に分類される製品で、厚さは最大12mmの波形状、もしくは最大17mmのフラット形状のセメント瓦でした。
また、富士スレートの「エアルーフ シリーズ」も、高分子繊維強化セメント瓦です。「エアルーフ シリーズ」は、高い寸法精度のセメント瓦で、施工時の密着性が高いため、防水性能に優れています。高分子繊維が強度を高め、弾性のある樹脂軽量骨材が衝撃を吸収し、簡単には割れたり砕けたりしない瓦を実現しました。さらに、フッ素コーティングやセラミックコーティングで仕上げていますので、表面劣化を防ぐ、高い耐久性を期待できます。
従来のセメント瓦の多くは廃番となりまたが、樹脂繊維混合セメント瓦や高分子繊維強化セメント瓦は、注目されている人気の屋根材です。
金属系屋根材

金属系の屋根には、めっき処理などを施した鋼板屋根や、銅板屋根、ステンレス鋼板屋根などがあります。金属系屋根材は、軽量で加工しやすく、施工性が高いため、複雑な屋根形状にも対応できる屋根材です。
鋼板屋根は、特に広く普及している、金属系屋根材です。以前はトタン屋根が広く使われていましたが、現在はトタン屋根に代わって、耐久性の高いガルバリウム鋼板やジンカリウム鋼板が普及しています。トタン屋根は、亜鉛めっきを施した鋼板ですが、ガルバリウム鋼板やジンカリウム鋼板はアルミ亜鉛合金めっきで加工した鋼板です。さらに、ガルバリウム鋼板やジンカリウム鋼板の表面に、天然の石粒を付けた屋根材も登場しました。
ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板は、トタンに代わる屋根材として、広く普及し定着した屋根材です。ガルバリウム鋼板とは、1972年にアメリカのベスレヘム・スチール社が開発したアルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板のことです。ガルバリウム鋼板の合金めっき比率は、重量比でアルミニウム55%、亜鉛43.4%、シリコン1.6%となっていますが、これはアルミニウムの耐食性と亜鉛の犠牲防食作用のバランスで決められました。ガルバリウム鋼板は、溶融亜鉛めっき鋼板(トタン)の約3~6倍の耐久性を期待でき、加工性や塗装性に関しても溶融亜鉛めっき鋼板と同等です。
日本でガルバリウム鋼板を生産している鋼板メーカーは、日本製鉄の子会社の日鉄鋼板や、JFEスチールなどです。そして、多くの金属屋根メーカーが、鋼板を成型加工して、屋根材として販売しています。
ガルバリウム鋼板を使った屋根材には、従来からの縦葺きや横葺きのほかに、瓦調の製品もあります。横葺きは、デザイン性が豊富であり、断熱材一体型の製品も販売されるようになりました。瓦調の金属屋根は、横葺きにデザイン性をさらに持たせた製品とも言えるでしょう。また、瓦調の金属屋根などは、リフォーム時にカバー工法で施工されることも多い屋根材です。
SGL
日鉄鋼板は、2013年にSGL(エスジーエル)という鋼板を開発しました。SはSuperior(上質な)・ Special(特別な)・Super(超越した)などを意味し、GLはガルバリウムの略です。
SGLは、ガルバリウム鋼板のめっき組成に、さらに2%のマグネシウムを添加した鋼板です。SGLの合金メッキ比率は、重量比でアルミニウム55%、亜鉛41.4%、マグネシウム2%、シリコン1.6%となります。日鉄鋼板の測定結果では、ガルバリウム鋼板の3倍超の耐食性を期待できるとのこと。
ジンカリウム鋼板
ジンカリウム鋼板は、商標が違うだけで、ガルバリウム鋼板とほぼ同じ鋼板と考えてもよいでしょう。ZINCALUMEがBlueScope社、GalvalumeがBIEC International社、日本語のガルバリウム鋼板が日本製鉄の登録商標です。
ジンカリウム鋼板の多くは、韓国やアメリカやニュージーランドなどから輸入されています。韓国製であれば、鉄鋼メーカーのポスコが鋼板を生産し、韓国の金属屋根メーカーが成型加工してから、日本の商社が輸入販売しているようです。
また、ジンカリウム鋼板の金属屋根は、石粒付きの製品が多いという違いもあります。石粒付きのジンカリウム鋼板を、屋根材に使うと、金属屋根のデメリットである遮音性の低さが改善され、雨音対策になります。そして、耐候性の高い、メンテナンスフリーの屋根材という、大きなメリットも享受できるのです。
銅板
銅板は、塗り替えなどの定期メンテナンスが不要な、高い耐久性の屋根材です。銅は、軟らかくて加工しやすく、色調が美しいという特徴があり、古来より建材に用いられてきました。現在も、寺社仏閣を中心に、和風住宅などでも、広く使われています。
銅板は、大気中の炭酸ガス等により、緑青の保護被膜がつくられるのも、大きな特徴の一つです。ただ、アルカリには弱いため、コンクリート面や便所回りには適していません。また、釉薬を使って製造する陶器瓦との相性が悪いという、事例もあります。陶器瓦の軒先などに銅板を使うと、減耗も多くなり、穴が開くことがあるようです。それから、釘や取付金物に異種金属を使うと、電食が起こり、穴開きに繋がります。酸性雨に対しては、純銅を使い、単純な形状に加工する銅屋根に関しては、問題ないようです。
銅板屋根は、剥がれたときに、補修が必要になることもありますが、100年持つと言われるほどの耐久性があります。ただし、金属系屋根材の中でも特に高額なため、予算的なことが問題となることが多いでしょう。また、薄い銅板の屋根では、雨音に対する防音性能が低くなるなど、金属屋根のデメリットは避けられません。
ステンレス鋼板
ステンレスは、錆びないという意味ですが、ステンレス鋼板は耐食性に優れた合金鋼です。ステンレス鋼板は、クロム系とクロム-ニッケル系とに大別され、クロム系は鉄と約16%のクロムによる合金で、ニッケルが添加されると、耐食性が増します。代表的なステンレス鋼板である、18-8(SUS304)ステンレスは、クロム18%、ニッケル8%のステンレス鋼です。そして、屋根材に使われているステンレス鋼板のほとんどは、18-8(SUS304)ステンレスです。
ステンレス鋼板をガルバリウム鋼板と比較すると、耐用年数の長いステンレス鋼板は、価格も高くなります。また、ステンレス鋼板は、塗装の必要はありませんが、美観目的などで塗装することはあります。
それから、ガルバリウム鋼板は、あくまでアルミニウム・亜鉛合金によるめっき鋼板のため、切断面などから錆が発生する恐れがあるのです。対して、ステンレス鋼板は、素材自体が非常に錆びに強いという、大きな違いがあります。
ただし、ステンレス鋼板には、ガルバリウム鋼板やカラートタンに比べて硬い素材のため、加工に手間がかかるという欠点があります。また、塗装ステンレス鋼板は、表面のカラー塗装が劣化すると、塗膜の膨れ・剥がれが起こりますので、美観を維持するための再塗装は必要です。また、耐久性を高めるためには、塗装をした方が良いでしょう。その際ですが、ステンレスは塗料が密着しにくい素材のため、ステンレス用の下塗剤が必要になります。
アスファルトシングル

アスファルトシングルとは、ガラス繊維基材などの原紙に、アスファルトを浸透、被覆し、表裏の表面に鉱物質粒子を密着させた、仕上げ張り用の屋根材です。屋根の施工では、野地板などの下地板に、下地防水紙としてアスファルトルーフィングを張ってから、仕上げの屋根材を施工します。名称や製造方法、施工方法まで似ていますが、アスファルトルーフィングは下葺き材であり、アスファルトシングルは仕上げ用の屋根葺き材です。
アスファルトシングルの施工方法には、釘打ちや接着剤で固定する方法、もしく併用する方法があります。アスファルトシングルを切断する際は、はさみやカッターを使用します。アスファルトシングルは、シート状で柔軟性があり、軽量で加工しやすい屋根材です。
アスファルトシングルは、北米では100年以上の歴史があり、米国では8割以上の住宅に使われているほど、シェア率が高い屋根材です。また、DIYで施工することも多いようです。日本では、建築基準法が改正され、仕様規定から性能規定への移行が進んだことで、使用することが認められるようになりました。日本でのシェアは、まだ低いですが、今後、普及する可能性はあるでしょう。
アスファルトシングルのメンテナンスは、塗装・カバー工法・葺き替えの3通りが考えられます。既存のアスファルトシングルの劣化が進んでいる場合は、全面撤去してから葺き替えることになるでしょう。カバー工法に関しては、既存のアスファルトシングルのほか、カラーベストなどの化粧スレートの上からも施工できます。アスファルトシングルの塗装に関する注意点は、水性塗料を使う必要があるということです。溶剤系(油性)塗料を使うと、アスファルト成分が溶けるなどの不具合が生じる恐れがあります。
また、アスファルトシングルには、表面を石粒で仕上げるなど、耐候性を高めた製品もあります。これらの製品であれば、メンテナンスは清掃などをする程度で済むでしょう。
最後に
日本の住宅では、多種多様の屋根材が使われてきました。現代の日本住宅では、化粧スレート、ガルバリウム鋼板、陶器瓦、セメント瓦などが主流の屋根材となっています。住んでいる地域により、使用される屋根材の種類が変わったり、住宅会社によって、扱っている屋根材の種類が変わったりすることもあるはずです。
また、屋根材に関しては、使用できる最低勾配があり、比較的緩勾配でも施工できる金属系屋根材に比べ、桟瓦などは勾配を必要とします。なぜなら、屋根材ごとに水はけ能力が異なるため、基準を満たさない勾配の屋根に使用すると、雨水が溜まりやすくなり、雨漏りの原因になるからです。
それから、リフォームする際は、軽量の金属系や化粧スレートから、重量のある粘土瓦やセメント瓦への変更は避けるべきでしょう。住んでいる建物に、重量のある屋根材を支えるだけの強度が、不足しているかもしれません。
屋根材は、基材となる素材の違いと、表面の仕上げなどの違いにより、性能が大きく変わります。同じ種類の屋根材でも、仕上げ加工により耐久性が変わりますので、基材に使われる素材だけでなく、表面の仕上げについても比較検討が必要です。
仕上げに使う塗料に、フッ素樹脂系塗料、もしくはセラミックなどの無機塗料を使えば、屋根材の耐久性は格段に向上するはずです。また、ジンカリウム鋼板やアスファルトシングルなどには、天然の石粒を表面に接着した製品もあります。ただし、それらの製品の欠点は、表面の石粒が落ちるという現象が発生することです。
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